物流のリスキリング助成金とは、運送や倉庫で働く社員の学び直しにかかる費用を、国が支える制度の総称です。
2024年問題や人手不足を背景に、既存の社員をデジタルや管理の業務へ育て直す動きが広がっています。
この記事では、物流でリスキリングが求められる理由から、職種別の学び直し、使える制度、申請の流れまでを、厚生労働省などの資料にもとづいて解説します。
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- 物流のリスキリングは2024年問題への備えになる
- 学び直しは職種ごとに内容が異なる
- 中核は事業展開等リスキリング支援コースである
- 申請は訓練開始前の計画届が前提となる
- TKwriteworksの無料相談で、自社に合う進め方がわかる
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物流業界でリスキリングが避けられない理由

はじめに、なぜ物流業界でリスキリングが求められているのかを整理します。
背景を押さえておくと、学び直しに取り組む意味を社内で共有しやすくなります。
本章では、2024年問題、輸送力の不足、そして学び直しの意味を確認しましょう。
時間外労働の規制が迫る配置転換
2024年から、トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられました。
働ける時間が短くなることで、一人が運べる量にも限りが出てきます。(出典:東北運輸局 物流の2024年問題とは)
そこで、既存の社員を新しい役割へ移す配置転換が課題になります。
運行の管理やデジタルを使った業務など、担い手を増やしたい役割は少なくありません。
その配置転換を支えるのが、社員の学び直しであるリスキリングです。
働ける時間が制度で区切られた以上、限られた人手をどの業務に振り向けるかが問われるため、新しい役割を担える社員を計画的に育てることが欠かせなくなっています。
2030年に見込まれる輸送力の不足
物流業界は、将来にわたる輸送力の不足という課題を抱えています。
国の資料では、何も対策をしなければ2030年度に約34%の輸送力が不足すると試算されています。(出典:物流革新に向けた政策パッケージ)
これは、運びたい荷物を運びきれなくなるおそれを示す数字です。
この不足を補うには、限られた人手の力を高めることが欠かせません。
デジタルを活かして効率を高める人材が、これまで以上に必要になります。
人を増やして不足を埋めるのが難しいなかでは、いまいる社員が効率を高める技能を身につけることが、輸送力を守るための現実的な備えになるでしょう。
解雇ではなく学び直しで守る
リスキリングは、人員を減らすための取り組みではありません。
むしろ、いまいる社員の力を高めて雇用を守るための取り組みです。
業務が変わっても、学び直しによって新しい役割で活躍してもらえます。
長年培った現場の知識は、デジタルの技能と組み合わせることで一層活きるでしょう。
会社にとっても、慣れた社員に長く働いてもらえる利点があります。
採用が難しい時代だからこそ、これまで支えてくれた社員の学び直しに投資して長く活躍してもらうことが、会社と働く人の双方にとって前向きな選択になります。
物流のリスキリングとは何を学び直す?

物流のリスキリングでは、職種ごとに学ぶ内容が異なります。
自社のどの職種に、どんな学びが必要かを整理すると計画が立てやすくなります。
本章では、ドライバー、庫内スタッフ、事務・管理という三つの職種を確認しましょう。
ドライバーの学び直し
ドライバーには、運転以外の業務へ広げる学び直しが考えられます。
運行管理や配車の調整など、経験を活かせる役割への転換です。
デジタルを使った点呼や記録の管理も、新たに学ぶ対象になります。
長年の運転経験があるからこそ、現場を理解した管理ができるようになります。
体力面での不安が出てきた社員に、活躍の場を広げる意味もあるでしょう。
運転の現場を知る人が管理側に回れば、ドライバーの気持ちに寄り添った配車や指導ができるため、経験を無駄にせず新しい役割で力を発揮してもらえます。
庫内スタッフの学び直し
倉庫で働く庫内スタッフにも、学び直しの機会があります。
倉庫管理のシステムを使いこなす技能は、その代表です。
在庫のデータを読み解き、効率的な保管や出荷を考える力も求められます。
自動化された機器を扱う技能を学ぶことも、これからは重要でしょう。
手作業に頼っていた業務を、データと機器で支える形へ変えていけます。
倉庫の自動化が進むほど、機器を動かし在庫のデータを扱える人材の重要性は増すため、庫内スタッフの学び直しは倉庫全体の効率を左右する取り組みになります。
事務・管理の学び直し
事務や管理を担う社員にも、学び直しの余地があります。
紙や手作業の業務を、デジタルに置き換える技能が求められます。
集めたデータを経営や現場の改善に活かす力も大切です。
職種ごとの学び直しの例を、次の表で整理しておきます。
| 職種 | 学び直しの例 | 目指す役割 |
|---|---|---|
| ドライバー | 運行管理・配車・デジタル点呼 | 管理側で経験を活かす |
| 庫内スタッフ | 倉庫管理システム・在庫データ・機器操作 | 倉庫の効率を高める |
| 事務・管理 | 業務のデジタル化・データ活用 | 現場の改善を支える |
自社のどの職種から学び直しを進めるかを考える手がかりにしてください。
すべての職種を一度に変える必要はなく、課題の大きい職種から着手するのが現実的でしょう。
*倉庫管理システム:入出庫や在庫の状況をデジタルで管理し、倉庫内の作業を効率化する仕組み。WMSとも呼ばれる。
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物流企業が使える国の助成金の全体像
物流企業が使える国の支援には、人への支援と設備への支援があります。
両者の役割を分けて捉えると、自社に合う制度を選びやすくなります。
本章では、人材育成の助成金、設備投資の補助金、そして選び分けの考え方を確認しましょう。
人材育成に使う人材開発支援助成金
人材育成の中心となるのが、厚生労働省の人材開発支援助成金です。
これは、社員に職業訓練を実施した事業主を支える制度で、複数のコースに分かれています。(出典:厚生労働省 人材開発支援助成金)
物流のリスキリングでは、新しい分野やデジタルの学び直しを支えるコースが中心になります。
職務に関連する技能の底上げには、別のコースも用意されています。
いずれのコースにも所定の要件があり、対象となる場合に活用を検討できます。
どのコースを使うかは自社が何を学ばせたいかによって変わるため、まず育成の目的を定めてから、それに合うコースを選ぶという順序で考えると迷いにくくなります。
設備・システム投資を支える補助金
人への支援とは別に、設備やシステムへの投資を支える補助金もあります。
倉庫の自動化機器や、物流を効率化するシステムの導入を支える制度です。
これらは、主に「モノ」への投資を支える制度だと捉えるとわかりやすいでしょう。
ただし、設備を入れても、それを使いこなす人材の育成は欠かせません。
モノへの投資とヒトへの投資は、あわせて考えることが大切です。
新しい機器やシステムを導入するときこそ、それを扱う社員の学び直しを同じ計画のなかに組み込むことで、投資を無駄なく成果へ結びつけられます。
ヒトとモノのどちらを軸にするか
制度が多いと、どれを使えばよいのか迷いやすくなります。
そこで、自社の目的が人にあるのか設備にあるのかで整理すると考えやすくなります。
社員の学び直しが中心なら、人材開発支援助成金を軸に据えるのが基本です。
設備の更新が中心なら、投資を支える補助金を主に検討します。
この記事では、以降で人材育成を支える助成金を中心に見ていきます。
ヒトとモノは切り離せない関係にあるため、どちらを軸にするかを決めたうえで、もう一方もあわせて検討する姿勢が、物流の効率化を前へ進める鍵になるでしょう。
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人材開発支援助成金の主なコースと物流での使いどころ
人材開発支援助成金には、目的の異なる複数のコースがあります。
物流のリスキリングでは、どのコースが使いやすいかを押さえておきましょう。
本章では、中核となるコース、技能を底上げするコース、そして選び方を確認します。
事業展開等リスキリング支援コース
中核となるのが、事業展開等リスキリング支援コースです。
これは、新しい事業や分野に向けた学び直しを支えるコースです。
デジタルや新分野の訓練が、対象として例示されています。(出典:厚生労働省 事業展開等リスキリング支援コースのご案内)
物流でいえば、デジタルを使った業務への転換がこの趣旨に重なります。
変化に対応するための前向きな学び直しを、後押しする位置づけの制度です。
倉庫の自動化やデジタル化といった新しい取り組みに向けて社員を育てる場面は、このコースの想定に近く、物流のリスキリングで軸になりやすいといえるでしょう。
人材育成支援コース
もう一つ押さえておきたいのが、人材育成支援コースです。
これは、職務に関連する知識や技能の習得を支えるコースです。
いまの業務に必要な技能を計画的に底上げする場面で使えます。
新分野への転換とまではいかない学び直しに向いています。
自社の学び直しがどちらの性質かで、使うコースが変わってきます。
新しい分野への挑戦なのか、いまの業務の質を高めるための学びなのかを見極めることで、どちらのコースが自社に合うのかを判断しやすくなります。
物流業がどのコースを選ぶか
どちらのコースを選ぶかは、学び直しの目的で決まります。
倉庫の自動化やデジタル化など新しい取り組みなら、事業展開等のコースが合います。
いまの業務に必要な技能の底上げなら、人材育成支援コースが向いています。
自社の取り組みの性質を見極めることが、コース選びの出発点でしょう。
どちらに当てはまるか迷う場合は、労働局や専門家に相談するのが確実です。
コースの要件は細かく定められているため、自社の学び直しがどのコースに当てはまるかを、計画の段階で専門家に確かめておくと安心して準備を進められます。
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事業展開等リスキリング支援コースの対象と要件
中核となるコースについて、対象や要件をもう少し詳しく見ていきます。
自社が対象になるかを判断するうえで、押さえておきたい点です。
本章では、対象となる訓練、対象となる事業主と労働者、そして制度改正を確認しましょう。
対象になる訓練の考え方
対象となるのは、新しい事業や分野に必要な知識や技能を学ぶ訓練です。
デジタルやITに関する学びなどが、対象として想定されています。
大切なのは、これから取り組む事業と訓練内容がつながっていることです。
いまの業務の延長にとどまる研修は、このコースの趣旨とずれる場合があります。
何のために学ぶのかを、事業の計画と結びつけて説明できることが鍵になるでしょう。
倉庫の自動化に向けた機器の操作やデータ活用の学びなど、これから進める取り組みと訓練の中身が結びついていることを、計画の段階で整理しておくことが欠かせません。
対象となる事業主と労働者
このコースには、対象となる事業主や労働者の条件があります。
雇用保険の適用を受けている事業所であることが、前提の一つです。
あわせて、社内で育成の計画や体制を整えることも求められます。
対象となる労働者にも、雇用の形などの条件があります。
自社や対象者が条件を満たすかを、事前に確かめておくことが大切です。
条件は細かく定められているため、自社が当てはまるかどうかは思い込みで判断せず、厚生労働省の案内や労働局への相談で確かめておくと安心でしょう。
制度改正で広がる対象範囲
助成金の制度は、年度ごとに見直されることがあります。
対象となる訓練の範囲や要件が、改正で変わる場合もあるのです。
そのため、申請の前には最新の案内を確認することが欠かせません。
古い情報のまま準備を進めると、要件を満たせなくなる恐れがあります。
制度を使う年度の最新版を確かめる習慣を、社内でつくっておきましょう。
制度は使いやすい方向へ見直されることもあるため、以前は対象外だと思っていた学び直しが対象に含まれる場合もあり、最新の情報を確かめる価値は大きいといえます。
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申請から支給までの流れと準備
制度を活用するには、決められた流れに沿って進める必要があります。
順序を誤ると対象外になることもあるため、全体の流れを先に押さえましょう。
本章では、計画の準備、提出のスケジュール、そして注意点を確認します。
| 段階 | やること |
|---|---|
| ①準備 | 推進者を選び職業能力開発計画をつくる |
| ②計画届 | 訓練開始前に計画届を労働局へ提出する |
| ③訓練 | 計画に沿って訓練を実施し記録を残す |
| ④支給申請 | 訓練後に定められた期間内で申請する |
この流れのなかで、とくに注意したい工程を順に見ていきます。
職業能力開発計画と推進者の準備
準備の段階で、社内に能力開発推進者を選びます。
これは、社員の育成を計画的に進める役割を担う担当者のことです。
あわせて、自社の育成方針をまとめた計画を作成します。
こうした社内の体制づくりが、申請の前提として求められます。
書類を整えるだけの作業と捉えず、自社がどう社員を育てるかを言葉にする機会と考えると、その後の申請や現場への説明もしやすくなるでしょう。
計画届の提出から支給申請までのスケジュール
準備が整ったら、訓練の計画届を労働局へ提出します。
ここで重要なのが、訓練を始める前に提出しておくという点です。
提出には訓練開始日からさかのぼった期限が定められています。
訓練の実施後には、定められた期間内に支給申請を行います。
提出や申請の期限は、制度改正で変わることもあります。
訓練の日程を決める前に厚生労働省や労働局の最新の案内で締め切りを確かめ、逆算して準備を始めることが、申請をつまずかせないための基本になります。
つまずきやすいポイントと事前チェック
申請でつまずきやすいのが、順序の誤りです。
計画届を出す前に始めた訓練は、対象として認められないのが原則です。
研修の申し込みと助成金の申請は、別のものだと捉える必要があります。
訓練の記録や必要な書類の保存も、忘れてはならない準備です。
手続きに不安があれば、社会保険労務士など専門家の力を借りるのも一つの方法でしょう。
制度を使うと決めたら訓練より先に手続きを進めるという順番を関係者で共有しておくことで、よい制度を順序の誤りだけで活用できなくなる事態を避けられます。
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物流企業がリスキリングを社内に定着させる進め方
助成金を活かすには、リスキリングを社内に定着させることが大切です。
制度を使うだけでなく、学び直しが根付く進め方を意識しましょう。
本章では、テーマの選び方、現場の巻き込み方、そして投資との組み合わせを確認します。
小さく始める研修テーマの選び方
学び直しは、いきなり大きく始める必要はありません。
まずは現場の課題に直結するテーマを一つ選ぶのが現実的です。
身近な業務の改善につながる学びなら、効果を実感しやすくなります。
成果が見えれば、次の学び直しへ進む弾みにもなるでしょう。
小さな成功を積み重ねる進め方が、無理のない定着につながります。
最初から幅広い内容を詰め込むより、現場がすぐに役立つと感じるテーマから始めるほうが、学ぶ側の意欲も高まり、社内に学び直しの文化が根付きやすくなります。
現場の反発を避ける巻き込み方
学び直しには、現場の理解と協力が欠かせません。
忙しい現場では、新しい学びが負担に感じられることもあります。
だからこそ、学ぶ意義を丁寧に伝えることが大切です。
学び直しが本人の働きやすさにつながると伝われば、前向きに取り組みやすくなります。
経営層が意義を示し、学ぶ時間を確保する姿勢も欠かせません。
学び直しを一方的に押しつけるのではなく、それが本人の仕事や将来にどう役立つのかを丁寧に伝えることで、現場の納得を得ながら取り組みを進められるでしょう。
投資と学び直しをセットで回す
学び直しは、設備やシステムへの投資とあわせて進めると効果が高まります。
新しい機器を入れるなら、それを扱う社員の育成も同時に計画します。
投資と育成を一つの計画のなかで回すことが理想です。
人への助成金と設備への補助金を組み合わせる視点も役立つでしょう。
弊社TKwriteworksでも、デジタル活用や人材育成を支える研修を提供しており、進め方から相談いただけます。
自社に合う進め方や、活用を担う人材の育成については、TKwriteworksの無料相談もあわせてご活用いただけます。
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物流のリスキリング助成金についてよくある質問
物流でリスキリング助成金の活用を検討する際に、よく寄せられる疑問をまとめました。
Q1. 中小の運送・倉庫会社でも助成金は使えますか?
規模の小さな事業所でも、要件を満たせば活用を検討できます。
制度は事業所の規模で一律に線引きするものではなく、学び直しの内容や対象者の条件で判断されます。
まずは自社の取り組みが対象になるかを、労働局や専門家に相談してみるとよいでしょう。
Q2. eラーニングや外部の講座も対象になりますか?
訓練の形式や対象は、コースごとに定められています。
対象になるかは訓練の内容や実施の方法によって変わるため、事前の確認が欠かせません。
最新の要件を厚生労働省の案内で確かめ、判断に迷えば労働局に相談してください。
Q3. どの窓口に相談すればよいですか?
助成金に関する相談は、各都道府県の労働局が窓口になります。
制度の要件や申請の手続きについて、確かな情報を得られます。
育成の設計とあわせて、専門家や支援機関に相談するのも一つの方法です。
まとめ
物流のリスキリングは、2024年問題や人手不足を乗り越えるための備えになります。
学び直しは職種ごとに内容が異なり、自社の課題に応じて計画することが大切です。
中核となる事業展開等リスキリング支援コースは、訓練開始前の計画届が活用の前提になります。
ヒトへの助成金とモノへの補助金を組み合わせ、投資と育成を一体で進めるとよいでしょう。
自社に合う進め方や制度活用の相談は、TKwriteworksの無料相談までお気軽にお寄せください。
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出典・参考情報
