なぜ今、これほどまでにDX*人材の育成が重要だと言われるのでしょうか。
ツールを導入すればDXが進むわけではなく、それを使いこなし、変革をやり遂げる人がいて初めて成果が生まれるからです。
この記事では、育成が重要視される背景から、採用だけでは足りない理由、育てるべき人材像までを、論点を追って整理します。
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▶︎ 関連記事:DX人材不足の対策
*DX:Digital Transformationの略。デジタル技術を使って事業や組織のあり方そのものを変革すること。
- 重要なのは変革を担うのが人だから
- 背景は2025年の崖と人材不足
- 採用より育成を軸に据える
- 育てる対象は経営・推進・現場の3層
- TKwriteworksの無料相談で、自社の育て方がわかる
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DX人材の育成が重要視される背景

育成がなぜ重要なのかを理解するには、まず日本企業がいま置かれている厳しい状況を押さえておく必要があります。
「2025年の崖」が示す危機
経済産業省は2018年のDXレポートのなかで、「2025年の崖*」という強い言葉を使って、日本企業に警鐘を鳴らしました。
古いシステムや人材不足を放置すれば、2025年以降に年間で12兆円規模もの経済損失が生じうると指摘しています。(出典:経済産業省「DXレポート」)
この巨大な損失を避けるには、老朽化したシステムの刷新だけでなく、変革を実際に担っていく人材の確保が大前提になります。
どれほど優れたシステムを入れても、それを活かす人がいなければ、宝の持ち腐れに終わってしまうからです。
巨額の損失リスクを避ける鍵は、技術そのものではなく、それを使いこなす人材にあるといえるでしょう。
深刻なDX人材の不足
ところが、その肝心の人材こそが決定的に足りていないというのが、いまの日本企業が直面している現実です。
経済産業省は、2030年には高位の見通しで約79万人ものIT人材が不足すると推計しています。
なかでも、変革の旗を振るDXリーダー層や、高度な技術を持つ先端人材は、採用しようとしても特に手に入りにくいとされています。
こうした状況だからこそ、外から採るだけでなく自社で人を育てるという発想が、企業の生き残りに直結する経営課題として浮かび上がってきたのです。
かつてのように、システムを情報システム部門や外注先に任せておけばよい時代は、もう終わりを迎えつつあります。
デジタルが事業そのものの競争力を左右するいま、その担い手を社内に持つことが、企業の土台になりつつあるのです。
*2025年の崖:経済産業省が2018年のDXレポートで示した概念。DXが進まない場合、2025年以降に大きな経済損失が生じるとされる問題。
なぜ採用だけでは解決しない?

人材が足りないなら、外から採用すればよいと考えるかもしれません。
しかし、採用だけでDX人材を確保し続けるのは、現実にはかなり難しいと言わざるを得ません。
採用に頼り続ける難しさ
そもそも市場全体で人材が足りていないため、限られた人材を奪い合う採用競争は激しく、特に中小企業は知名度や待遇の面で不利な立場に置かれます。
求人を出しても応募がなかなか集まらない、という声は、いまや業種を問わず多くの企業から聞こえてくるのではないでしょうか。
高い費用をかけて採用できても、自社の事業や文化を理解するまでには、相応の時間がかかります。
さらに、せっかく採用しても、より待遇の良い他社へ転職されてしまえば、投資した時間も採用費用も一度に失われてしまいます。
このように採用には、競争・コスト・流出という三つの壁が立ちはだかるのです。
育成が採用に勝る理由
一方で、社内で時間をかけて育てた人材は、自社の業務や事情、現場の空気を知り尽くしたうえで変革を担ってくれます。
育成は時間こそかかりますが、人材が社内に残り、ノウハウが組織に蓄積される点で採用に勝ります。
外から来た人がゼロから自社を理解するより、自社を知る人がデジタルを学ぶほうが、結果として回り道が少ないとも言えるでしょう。
業務の勘どころを押さえた社員がデジタルの力を手にすれば、現場の改善は驚くほど速く進むこともあります。
採用と育成の違いを、いったん表で整理しておきましょう。
| 観点 | 採用 | 育成 |
|---|---|---|
| スピード | 速い(即戦力) | 時間がかかる |
| 自社理解 | 理解まで時間が要る | もともと熟知している |
| 定着・蓄積 | 流出のリスクがある | 社内に残り蓄積される |
採用と育成は組み合わせる
もちろん採用を否定するわけではなく、急ぎの専門性は採用で補いながら、軸足を育成に置く発想が現実的でしょう。
採用は短期的な手当てとして有効ですが、それだけに頼る限り、毎年の人材不足の不安からは抜け出せません。
採用と育成は対立するものではなく、採った人に社内で育てる役割を任せれば、二つはうまくかみ合います。
外から来た知見を社内へ移しながら人を増やしていけば、採用の効果を長く活かせるようになります。
自社で人を育てられる力こそが、外部環境に振り回されない安定した経営の支えになります。
採用と育成の使い分けは、DX人材不足の対策を解説した記事でも詳しく扱っています。
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DX人材を育成しないと何が起きるのか
育成の重要性は、育てなかった場合に何が起きるかを考えると、より鮮明になります。
育てなかった場合に起きることは、大きく三つに整理できるでしょう。
| 育てないリスク | 何が起きるか |
|---|---|
| 競争力の低下 | 変化に対応できず競合に後れを取る |
| 外部依存 | 外注費がかさみノウハウも残らない |
| 現場との乖離 | 課題に合わない仕組みが使われず終わる |
競争力の低下と外部依存
第一に、市場や顧客の変化にすばやく対応できず、デジタルを武器にする競合に後れを取るリスクが高まります。
デジタルを前提とした新しい事業モデルが次々と広がるなか、その流れに対応できない企業は、顧客から徐々に選ばれなくなっていくでしょう。
第二に、社内に人材がいないと、外部への依存から抜け出せなくなります。
外部に頼り続ければ委託費用は際限なくかさみ、しかも自社にはノウハウがまったく残らないという悪循環に陥りがちです。
自社に知見が積み上がらない限り、いつまでも外部頼みの状態から抜け出せないでしょう。
こうした依存は、いざというときに自社で意思決定できない弱さにもつながります。
現場と乖離した仕組みになる
第三に、現場の課題を理解しないまま外部主導で導入された仕組みは、結局だれにも使われずに終わってしまいます。
自社の業務を知り尽くした人材が社内にいてこそ、現場が本当に困っている部分から、役立つデジタル化を進められるのです。
これらのリスクは、ある日突然あらわれるのではなく、気づかぬうちに少しずつ会社の体力を奪っていきます。
気づいたときには競合との差が大きく開いていた、という事態を避けるためにも、早めの育成が効いてくるでしょう。
育成を怠ることは、競争力の低下と外部依存という二重のリスクを、静かに抱え込むことを意味します。
どんなDX人材を育てるのか
育成が重要だとしても、社員の全員を高度なエンジニアや技術者に育て上げる必要は、まったくありません。
むしろ大切なのは、それぞれの役割に応じて必要なレベルを見極め、社員の層ごとに育て分けるという考え方です。
経済産業省も、デジタルスキル標準を示し、求められる能力を整理して可視化しています。
こうした公的な指針を手がかりにすれば、自社で何をどこまで育てればよいかの目安をつかみやすくなるでしょう。
層ごとに到達点を分ける
大切なのは、全員に同じことを求めるのではなく、それぞれの層ごとに到達点を分けて考えることです。
役割に見合った目標を置くことで、社員は無理なく学べ、会社も育成への投資の効果を測りやすくなります。
こうして層ごとに育った人材が互いにつながって初めて、組織全体としての本物のDXが現実のものになっていきます。
たとえば経営層には判断する力を、現場には日々の活用力をと、求めるものを変えていくのが現実的でしょう。
全員を同じ型にはめようとすると、かえって学びの負担ばかりが重くなってしまいます。
必要なレベルを役割ごとに見極めることが、無理なく続く育成の出発点になるのです。
- 変革を構想し旗を振る経営・リーダー層
- 施策を設計し実行する推進人材
- デジタルを業務で使いこなす現場の社員
経営・推進・現場の3つの層
経営層には、デジタルを前提として事業のあり方を構想し、会社が進む方向を決断する力が求められます。
推進を担う中核の人材には、現場の課題を整理し、データやツールを使って具体的な施策へと形にしていく力が必要です。
そして現場の社員には、日々の業務でデジタルを当たり前に使いこなす力が欠かせません。
この三つの層がバランスよくそろって初めて、一部の担当者任せにならず、組織全体としてDXを前に進められるようになります。
どの層から手をつけるかは会社によって異なりますが、経営層の理解がないまま現場だけを鍛えても、変革は長続きしません。
まずは経営層と推進人材から育て、そこから現場へと広げていく順番が、無理のない進め方といえるでしょう。
逆に、トップが理解しないまま現場にだけ研修を課すと、学んだ社員が浮いてしまい、せっかくの意欲もしぼんでいきます。
育成を成果につなげる3つの視点
ただ研修を受けさせれば人が育つ、というわけではありません。
受けさせた研修を確かな成果へとつなげるには、運用の面でいくつかの視点を押さえておく必要があります。
経営の関与、実践の場、そして継続という三つが、育成の成否を分ける要素です。
経営の関与と実践の場
まず、育成を人事部門だけの仕事にせず、経営者が育成の方針を自ら示して関与することが、すべての土台になります。
経営者が本気で取り組む姿勢を見せてこそ、社員もそれが会社の方針だと受け止め、学びに前向きになれるからです。
次に、研修で学んだスキルを、実際の業務のなかで試して使ってみる場を意図的に用意することが欠かせません。
学びと実践を往復させることで、知識は初めて使えるスキルへと定着していきます。
研修で得た知識も、現場で使う場がなければ、やがて忘れられてしまうものです。
小さな業務でよいので、学んだことをすぐ試せる機会を用意しておきたいところです。
学び続ける仕組みをつくる
そして、一度きりの研修で終わらせず、社員が自然と学び続けられる仕組みや雰囲気を、社内に根づかせることが重要です。
デジタルの技術は驚くほどの速さで変化し続けるため、育成もまた、どこかで完了するものではなく、終わりのない取り組みとして続けていく必要があります。
この三つの視点が欠けると、研修が「受けて終わり」のイベントになり、学びが成果に結びつきません。
育成への投資を無駄にしないためにも、学びを実務と地続きにする設計を、最初から組み込んでおきたいところです。
経営の関与、実践、継続のどれか一つでも欠けると、育成は成果に届きにくくなるでしょう。
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中小企業こそ育成が効く理由
DX人材の育成は、むしろ中小企業にこそ大きな意味を持ちます。
限られた採用市場で資金力のある大企業と正面から競っても、待遇や知名度の面でどうしても不利になりやすいためです。
少人数だからこそ効果が大きい
限られた人数だからこそ、一人ひとりが力をつければ、組織全体への効果は大きくなります。
一人が二人分の働きをできるようになれば、全体の底上げにつながり、その効果は規模が小さいほど際立ちます。
経営者と現場の距離が近く意思決定が速い中小企業では、学んだことをすぐ現場で試し、改善のサイクルへつなげやすいという強みもあるでしょう。
大企業のように何階層もの承認を経ずに、すぐ実行へ移せるのは中小企業ならではの強みです。
その身軽さを活かせば、限られた人数でも着実に変化を起こせるはずです。
規模の小ささを弱みではなく強みとして捉え直すことが、育成を前に進める力になります。
外部研修を活用して育てる
自社だけで教育の仕組みを一から抱え込む必要はなく、外部の研修をうまく活用すれば、負担を抑えながら着実に育成を進められます。
弊社でも、社員をDXの担い手へと育てるためのリスキリング研修を提供しています。
大企業にはない一体感とスピードを活かせば、中小企業でも自社ならではのDXを十分に実現できるでしょう。
人を育てる仕組みを持つことが、規模の小さな企業が生き残るための、確かな武器になります。
足りない部分は外で補いながら、社内に少しずつ力を蓄えていく姿勢が欠かせません。
外部を使いこなしつつ自前の力も育てるという両構えが、中小企業には向いているでしょう。
育成の第一歩として何から始めるか
重要性はわかっても、何から手をつければよいか迷う方は少なくないでしょう。
立派な研修制度をいきなり整えようと気負わず、いまの自社にできる範囲から始めるのが現実的です。
現状把握、小さく始めること、外部研修の活用という3つが、無理のない出発点になります。
- 社員のスキルの現状を把握する
- 一つの部署や業務から小さく始める
- 外部研修で不足を効率よく補う
現状を把握する
まず、社員がいまどんなスキルを持ち、何が足りないのかを、ざっくりとでも把握することから始めます。
現状が見えれば、全員に同じ研修を一律に課すのではなく、必要な人に必要な学びを届けられるようになります。
限られた予算と時間を、効果の高いところに集中させるためにも、この最初の見極めは欠かせません。
経済産業省が無料で提供するマナビDXのような学習の場を入り口に使えば、費用を抑えながら始められます。
まず現状を正しくつかむことが、限られた資源を無駄なく使うための出発点になります。
思い込みで研修を選ぶより、現状の数字を見てから決めるほうが、はるかに効果的です。
小さく始めて外部で補う
次に、いきなり全社で始めるのではなく、一つの部署や業務に絞って小さく育成を始め、その効果を確かめてから全社へ広げていきます。
小さな範囲なら、うまくいかなくてもやり直しがきき、現場の納得を得ながら進めやすくなるでしょう。
そして、足りない部分は外部の研修で補えば、自前で抱え込むよりも早く、効率よく育成を進められます。
小さな一歩でも踏み出すことが、人材不足の悪循環から抜け出すための確かなきっかけになります。
完璧を目指して動けないより、不完全でも始めるほうが、ずっと早く前に進めるでしょう。
まずは一歩を踏み出し、走りながら整えていくくらいの姿勢がちょうどよいといえます。
まとめ
DX人材の育成が重要なのは、変革を最後までやり遂げるのが、ツールではなく人にほかならないからです。
2025年の崖や深刻な人材不足を前にして、自社で人を育てられるかどうかが、これからの企業の生き残りを大きく左右するでしょう。
採用に頼りきらず、育成を軸に据えることが、外部環境に振り回されない経営につながります。
経営が関与し、実践の場を用意し、学びを続けるという地道な積み重ねこそが、変化に強い組織をつくります。
人材育成は、すぐに成果が見えにくい取り組みですが、数年後の会社の姿を確実に変えていく、未来への投資だといえるでしょう。
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出典・参考情報
