建設業の人材育成に使える助成金とは、技能講習や研修にかかる費用と賃金の一部を国が支援し、担い手の確保と育成を後押しする制度です。
建設業では高齢化と若手不足が進み、技能やノウハウをどう次の世代へ引き継ぐかが課題になっています。
この記事では、人材育成が急がれる背景から、活用できる助成金の種類、基本の要件と申請の流れ、助成金を活かした育成の進め方までを、中小建設業の実務目線で解説します。
▶︎ リスキリング研修の特設ページ
▶︎ 建設業DXの進め方はこちら
- 建設業の人材育成は高齢化と技能継承への対応策となる
- 建設業には専用の助成金が複数用意されている
- 活用には雇用保険や計画策定などの要件がある
- 育成は計画と振り返りの手順で進めると定着する
- TKwriteworksの無料相談で、自社に合う育成と助成の進め方がわかる
\ 今月残り1社対応可能! /
建設業で人材育成が急がれる背景

建設業の人材育成は、将来の備えではなく、いま着手すべき経営課題になっています。
背景には、担い手の高齢化と、技能を引き継ぐ若手の不足があります。
担い手不足と高齢化の現状
建設業の現場は、働き手の年齢構成にかたよりがあります。
令和7年版の国土交通白書によれば、建設業で働く人のうち55歳以上が36.7%を占め、29歳以下は11.7%にとどまっています。(出典:国土交通省 令和7年版国土交通白書)
全産業では29歳以下が16.9%であり、建設業の若手比率はそれを下回りました。
ベテランが退く時期が近づく一方で、入ってくる若手は少ないという構図です。
この状況では、採用と並行して、今いる人材を育てる取り組みが欠かせません。
人を増やすだけでは追いつかない時代だからこそ、いま働く一人ひとりの技能を底上げする投資が、会社の競争力を左右します。
技能・ノウハウの継承問題
建設の現場では、長年の経験で培われた技能が成果を左右します。
段取りの組み方や危険の予知は、教科書だけでは身につきにくいものです。
その知恵がベテランの頭の中だけにあると、退職とともに会社から失われます。
若手が同じ水準に達するには、計画的に学ぶ機会を用意する必要があります。
継承を仕組みにできるかどうかが、これからの建設会社の力を分けるでしょう。
育成を後回しにできない理由
人材育成は、目の前の工事に追われると後回しになりがちです。
しかし、育成を止めれば、数年後に現場を任せられる人がいなくなります。
育成の遅れは、受注の機会を逃す経営リスクに直結します。
だからこそ、費用や時間の負担を抑えられる助成金の活用が、現実的な選択肢になるのではないでしょうか。
建設業の人材育成における主な課題

助成金の前に、育成がうまく進まない原因を押さえておくと効果が高まります。
建設業ならではの慣習や働き方が、育成のつまずきにつながっている例は少なくありません。
背中を見て覚える慣習
建設業では、見て覚えることを当然とする文化が根強く残っています。
この方法は、教える側の負担が軽い一方で、習得までに時間がかかります。
何をどの順で学ぶかが言葉になっていないと、若手は伸び方に迷います。
教え方が人によって違えば、習熟のばらつきも大きくなるでしょう。
暗黙の知恵を、手順や基準として言葉にする工夫が求められます。
作業の手順や安全のポイントを写真や短い動画で残しておけば、若手がくり返し確認でき、教える側の時間も節約できます。
育成の計画や体系がない
多くの現場では、その場の必要に応じて教える形になりがちです。
年間でどの技能をいつ身につけるか、という計画がないと、育成は場当たりになります。
育成の計画がないままでは、助成金の活用も後手に回ります。
多くの助成金は、計画の策定を活用の前提としているためです。
逆に言えば、計画づくりは育成と助成の両方を前に進める起点になります。
現場が忙しく時間が取れない
工期に追われる現場では、研修の時間を確保しづらいのが実情です。
受講のために現場を離れると、その間の人手が不足してしまいます。
助成金には、受講中の賃金の一部を支える仕組みを持つものがあります。
時間の負担をやわらげる制度を知っておくと、踏み出しやすくなるでしょう。
*OFF-JT:Off the Job Trainingの略。通常の業務から離れて行う研修や講習。
\ 今月残り1社対応可能! /
建設業の人材育成に使える助成金の種類
建設業には、ほかの業種にはない専用の助成金が用意されています。
厚生労働省の「建設事業主等に対する助成金」が、その中心となる制度です。
建設事業主等に対する助成金とは
建設事業主等に対する助成金は、建設業の雇用環境の改善と技能の向上を支える制度です。
厚生労働省によれば、建設事業主が労働者の技能向上などの取り組みを行った場合に助成を受けられる仕組みです。(出典:厚生労働省「建設事業主等に対する助成金」)
制度は、建設事業主を対象とするものと、事業主団体を対象とするものに分かれます。
その中には、人材開発支援助成金や人材確保等支援助成金など、目的の異なる複数のコースが用意されています。
自社の目的に合うコースを選ぶことが、活用の第一歩になります。
人材開発支援助成金の建設コース
育成に直結するのが、人材開発支援助成金の建設向けコースです。
建設労働者技能実習コースは、現場で必要な技能講習や特別教育の受講を後押しします。
建設労働者認定訓練コースは、認定を受けた職業訓練の実施を支える仕組みです。
どちらのコースが合うかは、社員に身につけてほしい技能と訓練の形式を整理してから選ぶとよいでしょう。
いずれも、研修費用や受講中の賃金の一部に助成を活用できる場合があります。
助成の額や率はコースや年度で異なるため、厚生労働省の最新の案内で確認するのが確実です。
人材確保や定着を支える助成金
育成だけでなく、人を集め、職場に定着させる取り組みも支援の対象です。
人材確保等支援助成金には、若年者や女性が働きやすい職場づくりを支えるコースがあります。
建設キャリアアップシステムの活用を後押しするコースも設けられています。
育成と確保の両面から制度を組み合わせると、人材戦略に厚みが出ます。
どのコースが自社に合うかは、目的と対象者を整理してから判断するとよいでしょう。
*建設キャリアアップシステム:技能者の資格や就業履歴を業界で蓄積・共有する仕組み。
助成金を活用する際の基本要件と流れ
助成金は、申請すれば自動的に受けられるものではありません。
共通する要件と、申請のおおまかな流れを知っておくと準備がしやすくなります。
| 段階 | 主な内容 | 準備しておくこと |
|---|---|---|
| 事前準備 | 雇用保険の適用と育成計画の策定 | 対象者と訓練内容の整理 |
| 計画申請 | 訓練の前に計画を提出 | 様式の確認と提出期限の把握 |
| 訓練の実施 | 計画にそって研修を実施 | 受講記録や出勤簿の保管 |
| 支給申請 | 実施後に支給を申請 | 費用の証憑と必要書類の準備 |
表のとおり、助成金は訓練の前後で手続きが分かれ、書類の保管が結果を左右します。
細かな要件はコースで異なるため、計画の段階から準備を進めると無理がありません。
雇用保険の適用と計画の策定
多くのコースに共通する前提が、雇用保険の適用事業所であることです。
あわせて、どの社員にどんな訓練を行うかを示す育成の計画が求められます。
この計画は職業能力開発計画と呼ばれ、助成金の申請でも提出を求められる重要な書類です。
計画は訓練を始める前に整えておく必要があり、後追いでは認められません。
この段取りを外すと、せっかくの研修が助成の対象から外れてしまいます。
早めに労働局や社会保険労務士へ相談しておくと、抜け漏れを防げるでしょう。
申請の大まかな流れ
申請は、計画の提出から始まり、訓練の実施を経て支給申請へと進みます。
訓練中は、受講の記録や賃金の支払いを示す書類をそろえておく必要があります。
書類の不備は、支給の遅れや不支給につながる主な原因です。
手続きの負担を減らしたい場合は、社会保険労務士の支援を受ける方法もあります。
制度の適用可否や要件の詳細は、厚生労働省の最新の案内で確認してください。
\ 今月残り1社対応可能! /
助成金を活かした人材育成の進め方
助成金は手段であり、育成の効果を高める進め方とセットで考えることが大切です。
ここでは、計画から振り返りまでの流れを4つのステップで整理します。
- ステップ1:育成ニーズと課題の可視化
- ステップ2:ゴールと年間計画の設定
- ステップ3:研修の実施と記録
- ステップ4:振り返りと定着支援
育成ニーズと計画の設定
最初に、現場で不足している技能や知識を洗い出します。
誰に、いつまでに、どの水準まで育ってほしいかを言葉にできれば、研修の中身は自然と定まるでしょう。
この計画づくりは、助成金の申請に必要な書類とも重なります。
育成と助成の準備を一度に進められるため、最初の手間が後で効いてきます。
経営層と現場が同じゴールを共有しておくことも、この段階で押さえたい点です。
研修の実施と振り返り
計画ができたら、研修を実施し、受講の状況を記録します。
研修を受けて終わりにせず、学んだ内容を現場で試す場をつくることが、定着の近道ではないでしょうか。
定期的な面談で成長を確認することが、育成を続ける力になります。
うまくいった育成の進め方は、他の現場へ広げると効果が大きくなります。
記録を残しておけば、次年度の計画や助成金の申請にも役立つでしょう。
育成は一度きりの研修で終わるものではなく、計画と振り返りをくり返すなかで、少しずつ現場の力として根づいていきます。
デジタル時代に必要なリスキリング
これからの建設業では、技能の継承にデジタルの学びが加わります。
助成金を使った育成に、デジタルのリスキリングを組み込む視点を持っておきたいところです。
技能継承とデジタルの両輪
現場の技能と、デジタルを使いこなす力は、これからどちらも欠かせません。
図面の確認や日報の作成をデジタルに移せば、ベテランの時間を技術指導に回せます。
デジタル化と技能継承は、対立せず互いを支え合う関係です。
建設業のデジタル活用の全体像は、建設業DXの進め方でも整理しています。
育成計画には、技能とデジタルの両方を組み込む発想が役立つでしょう。
自社業務に合わせた研修
研修は、自社の業務に近い内容ほど現場で生きます。
一般的な座学よりも、自社の図面や日報を題材にした実習のほうが、現場での定着は進みやすいでしょう。
助成金の活用と、自社に合った研修の設計は、あわせて検討する価値があります。
制度の要件と研修の中身を両面から見られる相手に相談すれば、申請と育成の両方で抜けが出にくくなるでしょう。
助成金を入口にして、現場の技能とデジタルの力を同時に伸ばす設計が、これからの育成の軸になります。
リスキリングの考え方は、AIリスキリングが必要とされる理由でも解説しています。
\ 今月残り1社対応可能! /
建設業の人材育成助成金についてよくある質問
最後に、建設業の人材育成と助成金について相談の多い質問をまとめます。
自社の状況に近いものから確認してみてください。
Q1. どの助成金が使えますか?
建設業では、厚生労働省の建設事業主等に対する助成金が中心になります。
技能講習や研修なら人材開発支援助成金、人の確保や定着なら人材確保等支援助成金が候補です。
目的と対象者を整理したうえで、厚生労働省の案内や社会保険労務士に確認すると確実です。
Q2. 申請は難しいですか?
手続きには計画の提出や書類の準備が必要で、ある程度の手間はかかります。
訓練を始める前の計画申請を忘れると対象外になるため、段取りが重要です。
負担を抑えたい場合は、社会保険労務士の支援を受ける方法があります。
Q3. デジタル研修も対象になりますか?
研修の内容や形式によって、対象となるかどうかが変わります。
デジタルスキルの習得を支援するコースもあり、要件を満たせば活用できるかもしれません。
対象の可否は、研修の設計段階で厚生労働省の案内や専門家に確認することをおすすめします。
まとめ
建設業の人材育成は、高齢化と技能継承への対応として、いま取り組むべき課題です。
建設業には、人材開発支援助成金や人材確保等支援助成金といった専用の制度があり、要件を満たせば費用や賃金の一部に活用できます。
育成の計画づくりは、助成金の申請準備と重なり、両方を一度に前へ進められます。
制度の要件と自社に合う研修の設計をあわせて相談できる相手を見つけると、無理なく一歩を踏み出せるでしょう。
\ 今月残り1社対応可能! /
出典・参考情報
