介護の現場は深刻な人手不足に直面しており、限られた人数で質の高いケアを続けるには、デジタルの力を生かせる人材が欠かせなくなっています。
ところが、機器やソフトを導入しても、それを扱える職員が育たず、かえって負担が増えてしまう施設も少なくありません。
この記事では、育成が急がれる背景から、介護のデジタル化が抱える課題、育てたいスキル、そして育成の進め方までを、介護施設の目線で解説します。
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- 介護のデジタル人材育成は人手不足への対応策となる
- 機器だけ入れても人が育たねば効果は出ない
- 育てたいデジタルスキルがわかる
- 育成は計画と現場の支援で進めると定着する
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介護でデジタル人材の育成が急がれる背景

介護のデジタル人材育成は、もはや先送りできない経営課題になっています。
背景には、深刻な人手不足と、国がテクノロジー活用を強く後押ししているという二つの流れがあります。
人手不足とテクノロジー活用
介護の人手不足は、年々深刻さを増しています。
厚生労働省の推計では、2040年度には約57万人の介護職員が不足するとされ、テクノロジーによる生産性向上が重点施策に位置づけられています。(出典:厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」)
記録や見守り、情報共有といった業務をデジタルに置き換えれば、職員はケアそのものに、より多くの時間を割けるようになります。
国も介護報酬の改定で、テクノロジーを活用する施設の人員配置を一定の条件で見直すなど、現場の取り組みを後押ししています。
限られた人数で増える需要に応えるには、もはやデジタルの活用を避けて通ることはできません。
テクノロジーをうまく使えるかどうかが、これからの施設運営を大きく左右するといっても過言ではありません。
国の後押しもあるいまこそ、人材の育成に踏み出す好機だといえるでしょう。
人を支えるのは結局は人
テクノロジーが進んでも、それを動かすのは現場の職員です。
機器やソフトを導入しただけでは、操作に戸惑う職員が増え、かえって業務の負担が大きくなってしまうこともあります。
道具の性能を引き出せるかどうかは、使いこなす人がどれだけ育っているかにかかっています。
だからこそ、機器の導入と同じだけ、それを支える人材の育成に目を向けることが欠かせません。
デジタル人材の育成は、人手不足の時代に施設の力を左右する、土台となる取り組みだといえるでしょう。
機器への投資が成果に結びつくかどうかも、結局はそれを日々使う職員の習熟にかかっています。
人を育てる時間を惜しまないことが、遠回りのようでいて、実は最も確実な近道になります。
*ICT:Information and Communication Technologyの略。情報通信技術。記録や連絡をデジタルでつなぐ仕組みなど。
介護のデジタル化が抱える課題

デジタル化の必要性は理解されても、現場ではなかなか進まない施設も多く見られます。
つまずきの多くは、機器そのものではなく、人と運用の側にあります。
対応できるIT人材の不足
導入が進まない理由として、まず挙がるのが人材の不足です。
現場でICT機器の導入や運用を任せられる職員がいないために、関心はあっても一歩を踏み出せずにいる施設は少なくありません。
新しくIT人材を採用したり、外部の専門家に頼ったりするにも、相応の費用と手間がかかります。
だからこそ、いまいる職員のなかからデジタルを担える人を育てる発想が、現実的な解決策になります。
特別な専門家を一人置くより、現場をよく知る職員が少しずつ力をつけるほうが、長く続く力になるでしょう。
日々のケアを知る職員だからこそ、現場に合ったデジタルの使い方を考えられるという強みもあります。
現場の感覚とデジタルの知識が合わさってこそ、本当に役立つ仕組みが生まれます。
外から専門家を招くよりも、内側から育てるほうが、現場になじみやすいといえるでしょう。
目的と運用があいまいなまま
もう一つの課題が、目的と運用のあいまいさです。
何のために導入するのかがはっきりしないまま機器を入れると、記録すべき項目だけが増え、現場の負担がふくらんでしまいます。
導入したあとに、誰がどう使い続けるのかという運用の形を決めておかないと、せっかくの機器も使われなくなりがちです。
目的の明確化と運用体制づくりは、デジタル化を成功させるうえで欠かせない要素です。
こうした土台を整える役割も、育てたいデジタル人材に期待される働きの一つだといえるでしょう。
目的と運用がはっきりしていれば、職員も何のために学ぶのかを理解しやすくなり、研修にも前向きになります。
何のための導入かを丁寧に共有することが、現場を巻き込む第一歩になります。
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介護で育てたいデジタルスキル
デジタル人材といっても、高度なプログラミングの知識が必要なわけではありません。
介護の現場で求められるのは、日々の業務をデジタルでよりよくするための、地に足のついた力です。
| スキルの段階 | 身につけたい力 | 現場での活かし方 |
|---|---|---|
| 基本操作 | パソコンやタブレットの基本操作 | 記録や情報共有をデジタルで行う |
| 活用 | 介護ソフトや見守り機器の活用 | 記録の手間を減らしケアに集中 |
| 改善 | 業務を見直し改善を進める力 | 施設全体の運用づくりを担う |
表のとおり、スキルは基本操作から、活用、そして改善を進める力へと段階的に育っていきます。
それぞれの段階を、順に見ていきましょう。
基本のICT操作スキル
出発点となるのが、パソコンやタブレットの基本的な操作です。
記録のソフトへの入力や、職員どうしの情報共有をデジタルで行えるようになるだけでも、紙の手間や転記のミスは大きく減らせます。
見守り機器やインカムなど、現場で使う道具を無理なく扱える力も、ここに含まれるでしょう。
まずは全員が同じ基本を身につけることが、施設全体のデジタル化の土台になります。
苦手意識のある職員には、少人数で丁寧に教える機会を設けると、抵抗感もやわらいでいくでしょう。
はじめの一歩でつまずかせないことが、その後の学びの進み方を大きく左右します。
短い時間でも、くり返し触れることで操作は自然と身についていくでしょう。
できたことを一つずつ認めながら進めると、職員の学びは無理なく続いていきます。
教える側にも、相手の歩みに合わせて伝え方を変える工夫が求められます。
現場の改善を進める力
基本の操作に慣れたら、次は業務そのものを見直す力が求められます。
どの作業に無駄があるかを見つけ、デジタルでどう改善できるかを考えられる職員は、施設にとって貴重な存在です。
こうした人材は、機器の導入や運用づくりの中心となり、ほかの職員を引っ張る役割も担えるようになります。
現場をよく知る職員が改善を進められるようになると、デジタル化は一気に動き出します。
一人にすべてを任せるのではなく、複数の職員が改善の視点を持てるように育てることが理想でしょう。
改善を進められる職員が増えるほど、施設のデジタル化は止まらずに前へ進んでいきます。
現場発の小さな工夫が積み重なれば、施設全体の働きやすさにもつながっていくでしょう。
自分たちで改善できたという手応えは、仕事のやりがいにもつながっていきます。
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デジタル人材の育成の進め方
デジタル人材の育成も、一度に全員を変えようとすると無理が生じます。
現状の把握から始め、小さく試して広げる順番で進めると、現場の納得を得ながら定着させられるでしょう。
- ステップ1:現状とニーズの整理
- ステップ2:中心となる人から育てる
- ステップ3:学びを施設全体へ広げる
現状とニーズの整理
はじめに、職員のデジタルの習熟度と、現場で困っていることを書き出します。
誰がどの程度パソコンや機器を扱えるかを把握しておくと、研修の中身や順番を決めやすくなるでしょう。
何のために育成するのかという目的を、施設として言葉にしておくことが大切です。
記録の時間を減らしたいのか、見守りの質を高めたいのか、ねらいによって育てるべき力は変わってきます。
経営層と現場が同じゴールを共有しておくことも、この段階で押さえておきたい点です。
目的がそろわないまま研修を始めると、現場には負担だけが残ってしまいかねません。
何を目指すのかが明確なほど、どんな研修が必要かも自然と見えてきます。
育成の道筋がはっきりすれば、職員も先の見通しを持って学べるようになるでしょう。
中心となる人から育て、広げる
次に、まずは中心となる職員から育てていきます。
現場に詳しく、新しいことに前向きな職員を選んで育てると、その人がほかの職員を支える存在へと育っていくでしょう。
身近な先輩が教えてくれる体制があると、職員は安心して学べます。
うまくいった学び方や教え方を施設の手順としてまとめれば、新しく入った職員にも同じように伝えられるでしょう。
一度で完成させようとせず、小さな学びを積み重ねながら施設全体へ広げていく姿勢が定着の近道です。
外部の研修や、国の支援制度をあわせて活用すると、育成の負担をやわらげられます。
自施設だけで抱え込まず、使える制度や外部の力を上手に取り入れる姿勢も大切でしょう。
外部の研修を取り入れれば、自施設にない視点や、ほかの施設の事例にも触れられます。
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介護のデジタル人材育成についてよくある質問
最後に、介護のデジタル人材育成について相談の多い質問をまとめます。
自社の状況に近いものから確認してみてください。
Q1. 何から始めればよいですか?
まずは職員のデジタルの習熟度を把握し、現場で困っている業務を洗い出すのが確実です。
基本操作の研修から始め、中心となる職員を一人育てることが現実的な第一歩になります。
そこで手応えをつかんでから、対象を施設全体へ少しずつ広げていくとよいでしょう。
焦らず一段ずつ進めるほうが、職員の負担も少なく、結果として早く定着します。
Q2. ITが苦手な職員でも育てられますか?
ITが苦手な職員でも、無理なく育てていくことは十分に可能です。
はじめから多くを求めず、よく使う操作にしぼって少人数で丁寧に教えると、抵抗感はやわらいでいくでしょう。
自分の仕事が楽になると実感できれば、職員は前向きに学んでくれます。
小さな成功体験を重ねることが、苦手意識をほぐすいちばんの近道になります。
Q3. 育成に使える支援はありますか?
研修や機器の導入には、国や自治体の支援を活用できる場合があります。
介護のテクノロジー導入を後押しする事業などがあり、要件や内容は実施する自治体によって異なります。
制度の活用を考える場合は、自治体の窓口や専門家に相談しながら確認すると確実でしょう。
研修と機器の導入をあわせて計画すると、限られた支援を生かしやすくなります。
申請の要件は変わることもあるため、早めに情報を集めておくと安心でしょう。
まとめ
介護のデジタル人材育成は、人手不足とテクノロジー活用の流れのなかで、施設の力を支える土台になります。
育てたいのは高度な専門知識ではなく、基本操作から現場の改善までを担える、地に足のついた力です。
いまいる職員の可能性を引き出すことが、人手不足の時代を乗り越える確かな力になります。
デジタルとケアのどちらも大切にする姿勢が、これからの介護の現場を支えていくでしょう。
小さな一歩でも、あきらめずに続けることが、やがて大きな変化につながっていきます。
目的を整理し、中心となる職員から育てて施設全体へ広げることが、定着の分かれ目になります。
自社に合う育成の進め方に迷う場合は、外部の研修や専門の会社に相談しながら一歩を踏み出すと確実でしょう。
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